立正安国論は9段と10段が、2017年9月実施の青年部教学試験3級(初級試験)の出題範囲となっています(出題御書は2つ、もう一つは「佐渡御書」)。
全10段からなる立正安国論の一部のみが今回の教学試験では出題範囲となっていますが、立正安国論がいかなる御書であるかも含め、全体の内容の流れを知ることは、試験対策のみならず、今後の為にも有益です。
以上のことを念頭に当記事をお読みいただき、しかる後、教材(大白蓮華2017年6月号52ページ)をご覧頂ければと思います。
この記事では、全10段にわたる立正安国論全体の要旨(流れ)を極めて簡潔にまとめています。
なお、第9段と第10段については、「(青年3級・初級試験のために)」と題して、要点中の要点をまとめた記事を付加しています。ご活用下さい。
立正安国論とはいかなる御書か
全体の要旨に触れる前に、立正安国論がいかなる御書かを概説します。
立正安国論は「正嘉の大地震」の勃発を直接の動機として執筆されました。時に、文応元年(1260年)7月16日、39歳の御時。提出先は、時の実質的な最高権力者である北条時頼(ほじょうときより)です。
本書の内容は「国主諫暁の書」、つまり、時の最高権力者を諫める内容となっています。
※ 「諫暁」には、仏法者の立場から相手の誤りを指摘して、正しい道に導くという意義が込められている。
立正安国の題号における「立正」とは、正法の流布によって「生命尊厳の哲理である妙法への信」を胸中に確立すること。「安国」とは、国を安んずると読みますが、主権在民の時代にあっては、国とは民衆の一人一人を意味します。
そして、【立正は安国のための根本条件】であり、【安国こそ、立正の根本目的】であるということが重要です。
日蓮大聖人は、いかなる迫害にも屈することなく、社会の平和建設に向けて『対話による闘争』を貫かれました。つまり、立正安国の原理の普及を貫かれたのです。故に、日蓮大聖人の生涯にわたる行動は、「立正安国論に始まり、立正安国論に終わる」といわれます。
創価学会の使命もまた、この一点にあることは言うまでもありません。
では次に、立正安国論全体の要旨(流れ)を各段に沿って見てみましょう。
立正安国論の各段(全10段)の問答要旨(全体の流れ)
立正安国論全体の要旨(流れ)を把握しましょう。
立正安国論の全文は、御書全集の17ページ1行目から33ページ4行目わたる内容となっています。
内容は、全部で10段(各段はいくつかの章に分かれます)。各段ごとに、客の問いと主人の答えから構成されており、10の問いに対して9の答えが返されます。10番目の問いのみ、問いではなく「決意と誓い」であり、これをもって立正安国論は終了します。
以下は、全10段の問答の流れの要旨となります。極めて平易に全体の流れをつかめると思います。
なお、2017年の青年教学3級(初級)試験の出題範囲は「第9段と第10段(御書全集:31ページ1行目から33ページ4行目)」のみとなっています。
第1段 災難由来の根本原因を明かす
※ 第1段の範囲:御書17ページ1行目から14行目
問1:相次いで起こる天災や飢饉・疫病等。なすすべもなく人々が苦しむ世の中を客は嘆き、その原因がどこにあるのかと主人に尋ねる。
答1:主人は、世の人が皆、正法に背き悪法を信じているために、国土を守護すべき善神が去り、その後に悪鬼、魔神が入り、それが災難を引き起こしているのであると述べ、「災難の根源」を明かし、「神天上の法門」を説く。
第2段 災難由来の経証を引く
※ 第2段の範囲:同17ページ15行目から20ページ13行目
問2:先の答えに対する根拠を求めた客に対して、
答2:主人は四経(金光明経、大集経、仁王経、薬師経の4つ)の文を引いて説明する。
第3段 誹謗正法の由来を挙げ亡国を証す
※ 第3段の範囲:同20ページ14行目~21ページ16行目
問3:客が、当時の仏教各派が隆盛している姿を示し、反論する。
答3:主人は、当時の僧侶が実は、正法に背く悪侶であることを、経文を挙げながら示していく。
第4段 正法誹謗の元凶の所帰を明かす
※ 第4段の範囲:同21ページ17行目から24ページ4行目
問4:悪侶とは誰のことを指しているのか?、と客が問う。
答4:主人は、法然(ほうねん)を名指して、法然の著した『選択集(せんちゃくしゅう)』こそが、正法誹謗の邪説であることを明らかにしていく。
第5段 和漢の例を挙げ念仏亡国を示す
※ 第5段の範囲:同24ページ5行目から25ページ118行目
問5:法然を悪侶であるとした主人に対し、客は憤る。『法然の念仏も釈尊の経典から生まれたものに変わりはなく、主人こそ釈尊に背いている』と指摘して、帰ろうとする。
答5:これに対して主人は、笑みを浮かべて客をとどめ、まず、仮の教えを尊ぶ誤りを指摘する。中国と日本の例を現証として挙げ、法然の法華経誹謗の罪を説いていく。
第6段 念仏禁止の勘状の先例を挙ぐ
※ 第6段の範囲:同26ページ1行目から12行目
問6:客は主人の言葉を聞き、少し態度を和らげていく。しかし、これまで高僧が多くいたが、念仏を禁じる説を誰も言いだしたことはなく、低い身分の主人がそのように言うのは僭越だと語る。
答6:主人は謗法呵責の教えを語り、過去に念仏が禁止された例を挙げる。
第7段 仏勅を示し謗法断絶を勧む
※ 第7段の範囲:同26ページ13行目から30ページ7行目
問7:客が災難を治める具体的な方法を問う。
答7:主人は、涅槃経・仁王経等を挙げながら、謗法の人を戒めて、正法を行じる人を重んじれば、国家は安穏になると述べ、国中の謗法を断つように勧める。
第8段 謗法への布施を止むことを説く
※ 第8段の範囲:同30ページ8行目から18行目
問8:『謗法の輩を断ぜよ』という主人の言葉に客は、斬罪は仏法の教えに反しないかと問う。
答9:主人は、涅槃経等では斬罪が説かれているが、それは釈尊以前の事例であり、釈尊以後は、謗法への布施を止めることがそれに通じると述べる。
第9段 二難を予言し立正安国を論ず
※ 第9段の範囲:同31ページ1行目から32ページ18行目
問9:これまでの疑いや迷いが晴れた客が、主人が言った通りに「謗法に対する供養を止め、正法を行じる僧を重んじていく」という決意を表明する。
答9:主人はその申し出を喜んだ上で、七難のうち、まだ現実のものとなっていない他国侵逼難、自界叛逆難の二難が起こらないように、速やかにその決意を実行するよう訴える。
立正安国論・第9段の追記(青年3級・初級試験のために)
第9段からは、「第41章:正法・正師に帰依することを願う(31ページ1行目から6行目)」と「第42章:二難を予期し謗法の対治を促す(31ページ7行目から18行目)」、(第43章から第45章は略し)、及び「第46章:結論として立正安国を論ずる(32ページ13行目から17行目)」の3つの章が試験範囲の教材です。
主人は謗法の対治を誓った客の大いなる変化を喜ぶと共に、縁に紛動されやすい人の心の常を戒め、「決意即行動」の実践を促します。
続いて主人は、謗法の対治を急がねばならない理由として、「自界叛逆難」と「他国侵逼難」の二難が起こることが必定であると明かします。
第42章の結論として主人は、次のように結びます。
「汝須く一身の安堵を思わば先ず四表の静謐をいのらん者か」
(通解:自身の安心・安全を考えるのであれば、あなたはまず社会全体の静穏を祈ることが必要ではないか)
この部分は為政者への諌暁ですが、『私たちの仏法実践の永遠の指標』でもあり、極めて重要です。チェックしましょう。
また第46章で主人が、「汝早く信仰の寸心を改めて速に実乗の一善に帰せよ」と述べているところが重要です。
「信仰の寸心」とは、心であり、信仰の一念のこと。全ての現実変革は、一人の人間革命に始まります。そして、実乗の一善とは「南無妙法蓮華経」にほかなりません。
第10段 領解して立正安国を誓う
※ 10段の範囲:同32ページ18行目から33ページ4行目
問10(決意表明):客は自らの謗法を速やかに改めることを決意するとともに、自分と同じように邪義に惑わされている世の多くの人々を、覚醒させる実践に励むことを誓い、本書は終わる。
立正安国論・第10段の追記(青年3級・初級試験のために)
第10段は、『第47章:客「私も共に戦おう」(32ページ18行目から33ページ4行目)』で結びとなります。
客は心から納得して立正を決意し、次のように結びます。
「唯我が信ずるのみに非ず又他の誤りをも誡めんのみ」
(通解:ただ自分一人が信じるだけでなく、他の人々の誤りをも制止していこう)
立正安国論が主人の言葉ではなく客の誓いで結ばれていることは重要です。
弟子が立正安国に立ち上がり、師の行動に続いていく「広宣流布の原理」が示されると共に、「立正安国とは、一人一人が自身の人間革命に挑戦して、社会の繁栄と世界の平和を創造する主体者として立ち上がることが根本」であるということです。
以上。