ポスティング(裏ビデオのチラシ)バイトのコツ?効果や給料

「チラシ配り/日払い7千円以上/年齢不問/体力に自信のある人」。この求人にさっそく応募した。面談で、まじめにやる気はあるかどうかと聞かれ、あっさりと採用になった。

チラシ配りといっても駅頭でティッシュを配る類(たぐい)のものではない。広い区域を各住居まで出向き、配ってまわる(所定のポストに入れる)仕事だ。当時、被害が相次いだ「後から報酬~」のポスティング内職でもなかったので応募したが、「ポスティング」であることには変わりはない。

当のチラシはエロビデオの宣伝チラシであった。チラシの写真は実にエロチックで男性の劣情をこれでもかと刺激してやまない。仕事とは、いわゆる「宅配裏ビデオのチラシ撒き」であった。

裏ビデオのチラシをポスティングするという特異なバイトの経験は、辛さ(つらさ)厳しさばかりの思い出だが、このポスティング作業を通して、広告を配達する上でのコツや広告の効果について、いろいろと知るに及んだ。これは、その実録であります。

宅配裏ビデオのチラシ ポスティングの実態

のんきなもので、就業後ずっと後になって「商品」の実態を知った。チラシに記載の連絡先は携帯電話の番号だ。そこに連絡するかチラシの指示で所定の金額を振り込むと商品が送られて来る。ところがその中身はありきたりのピンクビデオと空テープが数本である。そして、送付内容について巧みな理由と文句を並べた手紙が同封されていて、いくら振り込めば本物が手に入ると結ばれている。この誘いに乗ると同様のことがあと2回繰り返される。「劣情」の強さであろう、かなりの男性が振り込みを繰り返し、結局6万円近くの散財となる。最後の便に同封された手紙には「当社では違法商品を扱いません」と記されている。

女性にとっての「ダイエット」のように、男性の弱みは、エロへの劣情にあるのだろうか。男女共にこの「弱み」によって失敗し、だまされても、なかなか怒りの声はあげづらい。そこのところを衝いた巧みな商法であったようだ。

「違法商品を扱わない」とは、はじめからそんなものは無いわけで、違法商品の魅力を引き合いに、男性の弱みにつけこんだ詐欺に他ならない。

裏ビデオのチラシをポスティングする職場の状況

チラシ配りのメンバーは朝8時半過ぎには銀座の社屋に集まって来る。社屋といっても貸しビルの1階と2階の倉庫のような空間だ。その会社のある都内銀座某所界隈には●●企画と称する同業各社が集中していた。

社屋に入ると、メンバー間の会話や私語はほとんど無いのに、全体に活気があり暗さは無かった。社屋の壁には各班・各メンバーの売上高が棒グラフで示された模造紙や、目標達成の檄文などが貼られ、床にはチラシの山が所せましと置かれている。

社屋に集まるメンバーは総勢で百人以上はいたであろうか。各班10名位の陣容だ。年齢は20代前半から40代前半くらいまでで20代中頃の女性が数名いた。コアとなる長期勤務者は半分もいなかったろう。あとの半分は次々と入れ替わっていく。

始業は朝礼から始まる。朝礼で行うことは成績優秀な班の班長とサブやん(副班長)への報奨金の授与である。これが、成績の振るわない班の班長にはかなりこたえる。成績とは配布したチラシから来る注文の数だ。

日当は、実は当日には貰えない。翌日に「出勤出来て」はじめて貰える・・。朝、班長から前日の日当を貰うと、当日の配達区域が示された地図と共に注意事項が言いわたされる。

配布区域は班ごとの地区割り、というのではなかった。一つの班でまとまった地域を担当するが、今日は横浜、明日は千葉と、赴く先はランダムで、かなり遠方まで行く。全員が電車を使って移動する。銀座の会社から配布先と夕刻の集合場所まで、そして集合場所から直帰となるが、自宅までの交通費も実費支給される。しかし、自宅から銀座社屋までの出社時の交通費は自分持ちだ。

チラシは内容にもよるが2千枚から4千枚を各自持参のナップザックなどに収める。 全員早々に準備が整うと班ごとに集まり気合を入れられる。集まる場所は社屋の中であったり、近くの公園であったりと様々だ。成績の上がらない班の班長は絶叫して叱咤するが、班のメンバーはけっこうさめている。

私の仕事の初日は、気合の入ったサブやんと半日ほど行動を共にして、種々手ほどきを受けた。同じく今日が初日という28歳のメガネの青年といっしょであった。ひととおり教えてもらうと、三人とも別行動となった。

ポスティングはこうする(裏ビデオのチラシの場合)

ポスティングもただポストへ入れれば良いというものではない。ヒット(注文のあること)にも影響するルールがある。アパートを例にとると、まず階下の集合ポストに一軒一枚づつ完全に中まで入れる。

この際、ポストの大きさにもよるが、チラシがポストの中で完全に上を向いて置かれるのが理想だ。さらに階段を上がり各室のドアポストに向かう。ドアポストにはチラシのタイトルが見えるように全体の5分の1くらいを外に出して1枚だけ入れる。そして、さらに1枚、表側を外に二つ折りしたチラシをドアの隙間(取っ手側)に挿入するのだが、この際、折り目の方を挿入しなければならない。反対にするとチラシは風でもっていかれる。

ドアポストへの投函は3階までは必ず上がっていって行う。一軒につき3枚のチラシを配布することになるが、基本的にこの枚数は厳守しなければならい。以上の要領で指定地域を一軒も漏らさずにまわっていく。なお、出発時、班長から指示される配布の開始地点と進行方向は厳守しなければならない。

すべて配り終えて、夕刻6時にはその日ごとに指定される場所に集合する。集合場所には、班全体の活動地域近辺の駅に程近い、ファーストフード店(マック・ミスド・ロッテリア等)が指定される。全員が集合するとサブやんの仕切る反省会が始まる。ここで一人一人に裁断が下り、日当を貰えるかどうかが決まる。

裏ビデオのチラシ ポスティングの継続と給料

班のメンバー一人一人のポスティング状況をチェックしてまわるのがサブやんの重要な仕事だ。各メンバーの配布開始地点から30分位の行程とその先のいくつかの地点に足を運んで綿密にチェックを入れる。反省会では、その結果が厳しく申し渡される。いわく、集合ポストに2枚入っていた。個別ポストの頭だしが少ない等々。まとめて投函したのが見つかれば即刻クビになる。

「やめろ!」と言われなければ翌朝の出勤は可能だが、サブやんの裁断に自信を無くして最後の日当を貰って辞めようにも、翌朝の現地出発前に銀座の社屋に行かないと日当は簡単に貰えないから、それが嫌で、その日の日当をあきらめて辞める人は多い。私の初日の反省会でのこと。40年配の男性がサブやんから激しくドヤしつけられ、逃げるように店を後にした。なお、私といっしょに入ったメガネの青年は、集合場所に現れることなく辞めている。

「ひとり身ないしは独身の男性で一人住まい」というのが、チラシのヒットが期待出来る客層だ。だから、ワンルームマンションや男子学生寮、所帯臭の無いアパートへのポスティングは欠かせない。一方、同業各社共通して、チラシ配布の為に下車する駅の近辺が作業の開始地点となるため、沿線に近いほど配布の密度が高く、離れるほどに疎らになる傾向がある。このため、密集地域の住民はポスティングに「スレ」ていて関心が薄く、疎らな地域では比較的手にしてもらいやすいという現象がおこる。従って、沿線から距離のある男子独身所帯などが狙い目だ。ところが、沿線の住居密集地は注文が期待うすでもチラシの配布は効率良く多量にさばけ、住居が疎らになれば、注文が期待出来てもチラシはさばけない。定刻までにチラシの全てをさばき切るのが鉄則だからつらいところだ。

全体に住居が疎らな地域を任せられると終日マラソン状態になる。階段も駆け上がり駆け下りる。求人条件の体力とは腕っ節にあらず、脚力に他ならなかった。体を使うから腹は減る。しかし時間との戦いで、食事に時間はかけられない。

チラシを入れるポストも黙って口を開けてくれているわけではない。大型マンションなどチラシをさばくのには助かるが、「宣伝ビラ投函禁止」の貼紙は仕事上無視するとしても、管理人に見つかると仕事をさせてはくれない。その場合、時間を見計らってまた戻って来て入れる。こうしたマンションのポスティングにもサブやんのチェックは入る。アパートの中には「靴脱ぎ荘」というのがある。どういうわけか、靴を脱がないと屋内の集合ポストに行けない造りになっている。こういったアパートには昼間から怖いお兄さんがいたりする。ここでは各室入口の引き戸の隙間にもチラシを挟む。サブやんはここにも出没する。

ポスティング(裏ビデオのチラシ)の手痛い想い出と終焉

私はほぼ一ヶ月、この仕事を続けた。この間にチラシのヒットは6度であったか・・良い出来とは到底言えないが、1ヒットにつき4千円が日当に上乗せされ、励みにはなっていた。いろいろあったが、手痛い想い出がふたつある。

(ひとつ)
マンションの集合ポストに投函中、背後に管理人が立ってささやいた。「あなたもお仕事で大変でしょうが、私も見すごすことは出来ませんのでお引取り下さい」ドヤされでもすれば闘志を燃やして再来するところだが、これにはまいった。

(ふたつ)
日も陰り始めた頃、こざっぱりとしたアパートに配り終えて先を急いでいた。すると若い女性が追いかけて来て つかまった。「これはあなたが入れたんでしょう!どうしてこんなものを入れるんですか!」――その日、職業の貴賎について思い悩んだ。

仕事はしばらく続けていると徐々にきつくなる。より住居が疎らな地域をもたされるようになっていった。「つわもの」はこれを乗り越えて、かつ、ヒットも稼いでいく。私はダメだった。

終日雨の日であった。住宅地に配り終えてもチラシはほとんどさばけなかった。こういう時はサブやんに電話を入れて状況を話し、別地域へ向かうなどすることになっていた。サブやんは携帯電話を持っていたが、まだ携帯の普及も今ほどでない時期で、私は携帯電話を持っていなかった。付近には公衆電話も見当たらない。下車駅からはだいぶ離れてしまっている。疎らな住宅地の彼方に団地らしきものが見える。そこに勝負をかけた。いざそこを目指すとかなりの距離があり、時間をずいぶんとロスした。そこは団地にはちがいなかったが棟数も少なく、私は勝負に敗れた。ぬれそぼり、重い足を引きずって大量のチラシを抱えたまま下車駅まで戻ると集合時刻は過ぎていた。この日が私のチラシ配り最後の日となった。

ポスティング最後の日から数年が経過した。宅配裏ビデオ・チラシ業界の状況もずいぶん変わって来ているという・・

誰かが架空の商品で稼げる方法を考え出して、そこに「その商品のポスティング」という文化が生まれた。その方法はともかく、ビジネスはアイデア次第である。

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